Makuake

A.S.I ハンドモデル/L——「手が描けない」を両手で終わらせる

Alex Ishiguro 読了目安:7分
A.S.I ハンドモデル/L——「手が描けない」を両手で終わらせる
目次
  1. 1プロダクト概要
  2. 2クリエイター・プロフィール
  3. 3市場背景
  4. 4気になるポイント
  5. 5応援したいポイント
  6. 6比較・代替案
  7. 7まとめ

コトブキヤの「ARTIST SUPPORT ITEM ハンドモデル/L(左手)」は、2023年9月15日にMakuakeで先行販売を開始し、同年11月に終了した。終了から約2年5ヶ月が経過している。最終支援総額1億5,166万円、支援者13,195人、達成率5,055%〔確認済——Makuakeキャンペーンページ/2023年11月終了〕。一般販売も定着し、右手+左手の世界累計出荷数は10万個を突破した。

右手版で1億4,800万円を集めた実績に左手を加え、「両手の絡みポーズ」という描画最難関を攻略するツールとして機能しているのか。可動域の実力・訴求表現の妥当性・価格に見合う代替手段を検証する。

プロダクト概要

女性型1/1スケール・ABS製・20か所以上の可動ポイントを持つ左手ハンドモデルの仕様・カラー・価格の全体像。
出典:ponysp.jp

女性型・1/1スケール(全長約210mm)のABS製可動ハンドモデル。右手版と完全なシンメトリー造形で、親指の中手指節関節を含む20か所以上の可動ポイントを備える。人体の可動域を忠実に再現し、過伸展方向にも一部対応する一方、手首の回内外や皮膚のたわみは非再現。カラーはGRAY・WHITE・PALE ORANGEの3色展開。

一般販売価格は13,200円(税込)。Makuake早割は約10,000円(税込)で提供され、平均支援単価は約11,500円だった〔確認済——支援総額÷支援者数の逆算〕。

クリエイター・プロフィール

壽屋(コトブキヤ)。1947年創業、東京都立川市に本社を置くフィギュア・プラモデル製造大手。資本金7,200万円〔メーカー公称——壽屋会社概要〕。フレームアームズ・ガールやメガミデバイスなど可動プラモデルの設計ノウハウが厚い。

監修はアニメーター・加々美高浩氏。『遊☆戯☆王GX』等の作画監督を務め、「手の描き方」指南書の著者としても知られる。原型は壽屋専属原型師・白髭 創氏。右手版Makuakeで1億4,800万円・支援者13,633人を達成し、シリーズはMakuake Of The Year 2023 SILVER賞を受賞〔確認済——壽屋公式 2023年12月〕。2025年2月にはハンドモデルMEN’Sシリーズも開始しており、クラウドファンディング運用に安定した実績がある。

市場背景

イラスト・漫画制作者が手の描画に悩む構造的背景と、木製マネキン・3Dソフトでは解消できなかった課題の説明。
出典:pximg.net

イラスト・漫画制作者にとって「手」は最も描画難度の高いパーツのひとつ。木製マネキンやシリコン手型では可動域が不足し、3Dポーズソフトは画面越しの観察に限られるという課題が長年あった。「手元に置いて角度を変えながら観察できる」物理モデルへの需要は根強い。

壽屋がMakuakeを選んだ背景には、ニッチな画材ツールを一般小売に先行して需要検証する戦略がある。右手版の成功で市場規模が証明され、左手版は初日から勢いをつける展開が可能になった。可動プラモデル設計のノウハウと加々美氏の解剖学的知見の掛け合わせが技術的参入障壁となり、同等精度の指関節可動モデルは国内流通では現時点で確認できていない〔要検証——2026年4月時点の市場調査未実施〕。

気になるポイント

女性型1種のみ・手首回内外の非再現・関節トレス問題・13,200円という価格設定の4点における製品の限界と注意点。
出典:ytimg.com

「あらゆる手の表現が可能」は言い過ぎ。キャンペーンページの訴求だが、本製品は女性型の細指モデル1種のみ。男性の骨太な手、子供の手、高齢者の手は再現できない。男性型は「ハンドモデルMEN’S」として2025年に別シリーズ化されており、本製品単体で手の多様性をカバーしきれない。

手首の捻り可動域に限界あり。Amazonレビューで「もう少し全体的に捻りがきくともっと優しい表現が出せそう」(2024年)との指摘がある。前腕方向の回内外が非再現のため、手を傾けた柔らかいポーズには工夫が要る。

関節部分はそのままトレスできない。ABS可動フィギュアの構造上、皮膚のたわみやシワは再現されない。note.comの複数記事で「そのままトレスすると皮がない不自然な感じになる」との指摘が共通しており、関節周辺は加筆修正が前提。製品同梱の解説紙にもこの点は注記されている。

13,200円は「デッサン参考ツール」として安くない。シリコン製ハンドマネキンなら2,000〜3,000円台、可動デッサン人形でも同価格帯で全身が手に入る。加々美氏監修の解剖学的精度と20か所以上の可動機構に価値を見出せるかが判断の分かれ目になる。

本製品に対する第三者の批判的レビューは極めて限定的で、名前付き個人による否定的レビューは確認できなかった。上記の懸念はAmazon匿名レビューおよびnote.com複数記事の共通指摘から構成している。

応援したいポイント

両手が揃って可能になった「絡みポーズ」の再現、人体限界を超えない可動設計、ディスプレイ兼用の完成度という3つの付加価値。
出典:makuake.com

「絡みポーズ」の解禁が最大の進化。同人漫画描きの猫の耳氏(note.com、2024年)は到着後すぐ複数ポーズを試し、親指付け根が手のひら側・手の甲側ともに大きく開く可動域の広さに感動したと報告。両手が揃ったことで手の中でも最難関の絡みポーズが再現可能になったと評価している。

「動きすぎない」設計が画力を底上げする。KawaiiSensei(Xフォロワー50万人超のHowToクリエイター集団)は実機を試用し、「めちゃめちゃ動くのに、動き過ぎない。これは手の可動域そのものだった」「軽く触っただけでもうカッコいいポーズが取れてる」と評価〔メーカー公称——Makuakeキャンペーンページ掲載の試用レポート、独立検証なし〕。人体にありえない角度にならない制御が、解剖学の知識なしでも自然なポーズを導く設計思想として機能している。

鑑賞性とツール性の両立。北上おせろ氏(note.com、2024年)およびミカゲ氏(個人ブログ blog-mikage.com、2024年)がそれぞれ独立した購入レビューを公開しており、描画ツールとしてだけでなく飾れるオブジェとしての完成度にも言及している〔未確認——各記事の具体的引用文は未取得〕。

引用文を取得できた名前付きレビュアーは猫の耳氏の1名。北上おせろ氏・ミカゲ氏は記事存在を確認済みだが具体引用は未取得。KawaiiSenseiはMakuakeキャンペーンページ掲載のメーカー提供試用レポートであり、独立レビューとしてはカウントしていない。

比較・代替案

シリコン製ハンドマネキン(汎用品)。2,000〜3,000円台で入手可能な実寸シリコン手型。ポーズ固定用途には対応するが、指関節の独立可動はできず、複雑なポーズ参照には向かない。価格重視で固定ポーズを参照する用途に。

可動デッサン人形(全身型)。手指を含む全身の可動を備えたデッサン人形。手の可動精度はハンドモデルに及ばないが、手と腕の連動ポーズや全身バランスを確認できる利点がある。身体全体の構図検討が多い描き手に。

手の描き方ポーズ集・参考書籍(玄光社ほか)。写真・図版ベースの参照資料で、1,500〜2,500円程度。物理モデルではないが持ち運びやすく、加々美高浩氏自身の著書『手の描き方』シリーズもこのカテゴリに含まれる。

※「手の描き方ポーズ集」は現時点で楽天市場・Amazon・公式ストアで新品販売が確認できませんでした。中古市場やオークションサイトでの取り扱いがある可能性があります。

まとめ

加々美高浩氏の解剖学的知見とコトブキヤの可動設計ノウハウが結実した、手の描画に特化した物理リファレンスツール。右手+左手の累計10万個という出荷実績が、ニッチな画材カテゴリにおける需要の強さを裏付けている。「あらゆる手の表現が可能」という訴求には女性型限定の留保がつき、手首の捻りやトレス時の関節処理には制約があるが、両手の絡みポーズを物理モデルで参照できる選択肢としての存在感は確かだ。

いま中古で検討している人へ。フリマアプリでは右手・左手とも出品が確認でき、8,000〜10,000円台での取引が見られる〔未確認——フリマ相場は変動〕。ABS製のため関節のヘタリは使用頻度に依存する。中古購入時は各指関節の保持力——ポーズを維持できるか——を確認したい。

これからA.S.I ハンドモデル/Lを買いたい人へ。右手版を持っていない場合、左右セットでの購入が本製品の真価を引き出す。一般販売価格は左右合計26,400円(税込)。描画ツールとしては高価だが、「手のポーズに迷う時間」を日常的に短縮できるなら長期的な投資効率は高い。カラーは好みだが、陰影の観察にはGRAYが使いやすいとの声が多い。

その他の購入先

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Alex Ishiguro

編集長

MakuakeやCAMPFIREで話題になった商品の「その後」を追うメディアを運営。約束されたものが実際に届いたのか、消えてしまったのかを記録する。

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