Makuake

Sonic Soak——1.17億円の「何でも洗える」は本当か

Alex Ishiguro 読了目安:8分
Sonic Soak——1.17億円の「何でも洗える」は本当か
目次
  1. 1プロダクト概要
  2. 2クリエイター・プロフィール
  3. 3市場背景
  4. 4気になるポイント
  5. 5応援したいポイント
  6. 6比較・代替案
  7. 7まとめ

2018年、Makuakeで6,561人の支援者から1億1,774万円超を集め、達成率11,774%を記録した超音波洗浄スティック「Sonic Soak」〔確認済——Makuakeキャンペーンページ/2018年7月終了〕。当時の報道ではMakuake歴代2位の調達額とされた〔メーカー公称——PR TIMES 2018年11月〕。Indiegogoでも約180万ドル(約1億9,000万円)を調達したとされる〔メーカー公称——PR TIMES 2018年11月、独立検証なし〕。

キャンペーンは2018年に実施され、同年7月に終了。終了から約8年が経過している。一般販売価格17,800円(税込)で家電量販店にも並んだこのスティック型超音波洗浄機は、「衣服もカミソリも野菜も洗える」という訴求どおりの実力を持っているのか。8年分の使用実態と技術的限界を検証する。

プロダクト概要

Sonic Soakの外観・サイズ・超音波50kHz仕様・タイマー設定など基本スペックと使用原理の紹介
出典:PR TIMES

Sonic Soakは、棒状のヘッドを水中に沈めてスイッチを入れるだけで超音波洗浄ができるポータブル型デバイス。本体重量約113g、コントローラー含め約403g。タイマーは120/360/720/900秒の4段階。消費電力は約50W。超音波周波数50kHz——毎秒5万回の振動でキャビテーション(超微細な真空泡の生成と崩壊)を起こし、汚れを物理的に剥離する仕組みだ〔メーカー公称——公式製品ページ〕。

一般販売価格は17,800円(税込)。Makuake応援購入の具体的な早割価格は確認できなかった〔未確認——キャンペーンページ・二次報道いずれでも早割実額を取得できず〕。

クリエイター・プロフィール

日本販売元Earth Ship(谷俊介代表)の企業概要と、米国発製品の日本展開体制についての説明
出典:licdn.com

日本での販売元は株式会社Earth Ship(代表取締役社長:谷俊介、茨城県常総市、設立2010年2月、資本金4,740万円、グループ従業員35名・子会社9社)〔確認済——公式サイト会社概要〕。Sonic Soak自体は米国発の製品で、Earth Shipが2018年11月より日本正規販売を担当している。Amazon、楽天、Yahoo!ショッピング、ビックカメラなど大手チャネルに展開済み。日本公式サイトsonicsoak.jpは2026年4月時点でも稼働中で、事業継続は確認できる。

2019年3月にはDISCOVER株式会社(代表:千葉史生)〔確認済——公式サイト〕も動画ショッピングサイト経由で販売を開始しており、複数の販売チャネルが並存する構図だ。

市場背景

据え置き型超音波洗浄機市場にスティック型で参入したSonic Soakの差別化とMakuake展開の背景
出典:aacdn.jp

超音波洗浄機は宝飾店や歯科医院で長く使われてきた技術だが、2010年代後半に家庭用の据え置き型が普及し始めた。シチズンやツインバードが数千円台の槽型モデルを展開するなか、Sonic Soakは「ポータブル・スティック型」という独自形態で参入。洗面器やバケツが洗浄槽になるため、据え置き型では扱えない上履き・鍋・衣服にも対応できる点が差別化要素だった。

Earth Shipは設立2010年・子会社9社のグループ企業であり、販路・資金力を既に持つ企業が先行販促チャネルとしてMakuakeを活用した構図が読み取れる。開始2時間で目標100万円を突破し初日で370万円超を集めた勢いは、Facebook広告を含む積極的なプロモーション施策に支えられていた面もある——Makuake支援者のutautan氏も「Facebook広告の多さから調達額の背景に疑問」を呈している(はてなブログ「Try Something New」)。

気になるポイント

50kHzの物理的限界——「何でも洗える」の射程。Sonic Soakの超音波周波数50kHzは、業務用超音波洗浄機の主流帯域(28〜40kHz)より高い。高周波帯はデリケートな素材に優しい反面、泡の破壊力は低周波に劣る。スペック図鑑のsupekan777氏は「頑固な油汚れや泥汚れを落とすことは難しい」「作動中にジ〜〜〜という機械音が鳴り響く」とデメリットを列挙し、過度な期待は禁物と警告している(スペック図鑑、2022年7月)。楽天レビューでも「手もみしても落ちないような汚れはこれを使っても落ちない」「洗濯物の汚れには効果が低かった」との声がある(いずれも匿名投稿)。衣類の頑固な汚れを期待して購入すると、落差は大きい。

「洗濯機の1/40の水・1/15の電力」——少量限定の省エネ比較。消費電力約50W、洗面器サイズの水量で動作するため、数値自体は間違いではない。ただし一度に洗える量は約2kgまでの少量に限られる。洗濯機の代替として省エネ効果を期待するのは的外れで、あくまで補助的な手洗い用途の道具だ。

「ポータブル」の印象と取り回しのギャップ。本体は約113gと軽量だが、AC電源必須のため使用場所はコンセントの届く範囲に限られる。楽天レビューでは「タッチパネルの感度が良すぎて指がかすっただけで動作してしまう」との操作性の指摘もある(匿名投稿)。旅行先での洗濯を訴求しているが、電源環境に依存する点は留意したい。

「残留農薬も落とせる」——独立検証データの不在。キャビテーションによる表面付着物の物理的除去は超音波洗浄の一般原理だが、「残留農薬除去」の効果を裏付ける独立した第三者検証データは確認できなかった。@DIMEの記事(2018年5月)でも「残留農薬落とし」と紹介されているが、メーカー訴求の転記であり独立検証ではない。健康上の効果を謳う以上、エビデンスの提示は不可欠だ。

なお、PSEマーク(電気用品安全法)の取得状況は公式サイト・メディア報道のいずれからも確認できなかった〔要検証——販売時点の実態〕。AC電源使用製品として対象区分に該当する可能性があり、購入検討者は販売元に現状を確認されたい。

名前付きの批判的レビュアーはsupekan777氏1名に留まった。発売から約8年が経過しているが、名前付きの独立レビューは本稿で引用した件数に留まり、Amazon・価格.comのレビュー詳細データは本稿執筆時点で取得できていない。post-shipment由来のレビュー網羅性には限界がある。

応援したいポイント

スティック1本で洗浄対象を選ばない汎用性。据え置き型の超音波洗浄機は槽のサイズに収まるものしか洗えないが、Sonic Soakは洗面器・バケツ・シンクなど任意の容器で使える。やなあ氏は襟袖の蓄積汚れにSonic Soakを使い、「襟袖汚れにはSonic Soakが効きすぎる」と通常の洗濯では落ちない汚れへの効果を評価している(家えログ、2018年11月)。

子育て世帯での実用性。yanoaca氏は3ヶ月使用した結果を「子育てに万能」と総括し、哺乳瓶の洗浄や子供の上履き洗浄でブラシの届かない靴先まできれいになったと報告している(個人ブログ〔未確認——ブログ投稿日取得不可〕)。utautan氏もMakuakeで購入後、子供のプラスチック玩具の洗浄に特に効果的だったと評価している(はてなブログ「Try Something New」〔前述のとおり日付未確認〕)。

メディアの実機検証で裏付けられた洗浄力。@DIMEでは鈴木拓也氏(フリーライター)がSonic Soakの機能と用途を紹介している(2018年5月)。re:sumicaの検証記事では、焦げたホーロー鍋を重曹+酢と併用して158回洗浄し白さまで回復させた事例が報告されている〔未確認——掲載年月取得不可〕。Engadget日本版も2018年7月に実機レビューを掲載し、化粧パフ・化粧ブラシの洗浄を検証した〔確認済——Engadget日本版 2018年7月、サイト2022年閉鎖済み・アーカイブで確認〕。時間はかかるが、超音波の物理的洗浄力には一定の実証がある。

肯定的な名前付きレビューは個人ブログ3名(やなあ氏・yanoaca氏・utautan氏)と商業メディア1名(鈴木拓也氏・@DIME)に留まり、商業メディアの記名実機レビューは限定的だった。

比較・代替案

Sonic Soakは「ポータブル・スティック型」という独自カテゴリの製品であり、同形態の競合は日本市場で極めて限られる。以下の代替品はいずれも「据え置き・槽型」の超音波洗浄器で、使用形態が根本的に異なる。眼鏡やアクセサリーなど小物洗浄が主目的なら、槽型のほうが手軽で価格も抑えられる。

シチズン SWT710。国内家電メーカーの定番モデルで、眼鏡・アクセサリー向けのコンパクトな槽型。実売価格帯も手頃で、超音波洗浄の入門機として定評がある。

その他の購入先

ツインバード EC-4548W。新潟の家電メーカーによる槽型モデル。480mlの洗浄槽で眼鏡・貴金属に対応する。安価に手に入るため、小物専用なら十分な選択肢だ。

ツインバード EC-4548W 超音波洗浄器
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その他の購入先

サンワダイレクト 200-CD037。PC周辺機器メーカーが展開する超音波洗浄機で、750mlの大きめの槽を持つ。時計バンドや入れ歯にも対応し、槽型のなかでは汎用性が高い。

その他の購入先

まとめ

Sonic Soakは、超音波洗浄を「槽から解放した」ポータブルスティックとして独自のポジションを築いた製品だ。約113gの本体を水に入れるだけという手軽さは、子育て世帯や旅行時の衣類洗浄など、従来の超音波洗浄機ではカバーできなかった用途を開拓した。

一方で、50kHz高周波帯ゆえの洗浄力の限界、省エネ比較の前提条件、AC電源依存の取り回し、残留農薬除去の検証不在という4点は押さえておきたい。「何でも洗える魔法の杖」ではなく、「デリケートな素材や小物の補助洗浄ツール」として理解すれば、実用的な道具として機能する。

いま中古で検討している人へ。発売から約8年が経過し、中古市場にも出回っている。バッテリー内蔵ではなくAC電源必須のため、電源コードやタッチパネルの経年劣化を確認のうえ、動作確認済みの個体を選びたい。PSE取得状況が不明確なため、正規販売ルート経由の製品であることを確認するのが安全だ。

これからSonic Soakを買いたい人へ。日本公式サイトは2026年4月時点で稼働中。頑固な油汚れ・泥汚れは苦手だが、哺乳瓶・上履き・眼鏡・アクセサリーといった「ブラシが届きにくい小物の日常洗浄」を目的とするなら、17,800円の投資に見合う。据え置き型で済む用途なら、数千円のシチズンやツインバードのほうが合理的だ。

その他の購入先

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Alex Ishiguro

編集長

MakuakeやCAMPFIREで話題になった商品の「その後」を追うメディアを運営。約束されたものが実際に届いたのか、消えてしまったのかを記録する。

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