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3.4億円のK10+、「応援購入」はなぜ裏切られたか

Alex Ishiguro 読了目安:7分
3.4億円のK10+、「応援購入」はなぜ裏切られたか
目次
  1. 1プロダクト概要
  2. 2クリエイター・プロフィール
  3. 3市場背景
  4. 4気になるポイント
  5. 5応援したいポイント
  6. 6比較・代替案
  7. 7まとめ

3億4,000万円——目標額の425倍を叩き出したロボット掃除機がある。SwitchBot K10+。直径わずか24.8cmにLiDARマッピングと自動ゴミ収集を詰め込み、「日本の住宅に最適化した」と謳った一台だ。Makuake掃除機カテゴリの歴代1位とされるが、これはSwitchBot自身のプレスリリース(日刊工業新聞転載、2023年4月)に基づく数字である〔確認済:メーカー公称〕。

キャンペーン終了から約3年。K10+はシリーズ化され後継機K11+も登場している。製品としての評価は概ね良好だ。だがこの記事が掘り下げるのは性能ではない。5,000人超のサポーター(Makuakeキャンペーンページ)〔確認済〕がまだ全員商品を受け取っていない段階で、Amazonプライムデーにサポーター価格より安い値札がついた「あの事件」——応援購入とは何だったのか。振り返る価値はある。

プロダクト概要

SwitchBot K10+は自動ゴミ収集ステーション付きのロボット掃除機だ。本体直径24.8cm・高さ9.2cm——ベッドやソファの下にも潜り込めるサイズで、一般的なロボット掃除機(直径35cm前後)の約7割。ワンルームの家具の隙間や脱衣所の洗濯機横といった「あと数センチ足りない」場所に入れることが最大のウリだ。

ロボット掃除機が椅子の脚の間を通り抜けて清掃している製品写真
出典:cdn

吸引力2500Paは2023年当時のハイエンド機(Roborock S8の6000Pa等)と比べれば控えめだが、この小型ボディでLiDAR SLAMと4L集塵ステーション(最大70日間ゴミ捨て不要)を両立させた点がK10+の存在意義だった。市販のお掃除シートでモップ掛けも可能だが、吸引と水拭きの同時稼働はできない〔確認済〕。

Makuakeでのキャンペーン価格は超超早割¥41,800からMakuake特別価格¥51,800。キャンペーンページ記載の一般販売予定価格は¥68,880だった。

クリエイター・プロフィール

開発元は中国・深圳のWoan Technology(卧安科技有限公司、2015年設立)。日本法人SWITCHBOT株式会社は2020年設立、資本金500万円で東京・恵比寿に所在する〔確認済〕。中国企業の日本子会社としては一般的な資本水準だ。IoTスマートホームブランドとして世界100以上の国・地域で展開し、日本国内では2023年時点で100万世帯超のユーザーを抱えていた。初代ロボット掃除機S1 Plusは家電批評オブ・ザ・イヤー2022の10万円以下ロボット掃除機部門でベストバイを受賞している(360life.shinyusha.co.jp)〔確認済〕。「IoTデバイスNo.1ブランド」の肩書は「2022年11月 家電Biz調べ」が出典で、調査方法は非公開——事実上の自社調べだ〔確認済:メーカー公称〕。

クラウドファンディングでよく見る無名スタートアップではない。すでに確立されたブランドがなぜMakuakeを選んだのかは後述する。

市場背景

2023年春、日本のロボット掃除機市場はiRobot・Roborock・ECOVACSの三つ巴だった。どれも直径35cm前後の大型機で、日本の住宅事情——引き戸のレール、洗面台下の隙間、廊下に置かれた収納ラック——に対する答えは「家具をどかせ」に等しかった。

SwitchBotロボット掃除機S1 PlusとK10+の本体サイズ比較写真。K10+が大幅に小型であることが分かる
出典:cdn

K10+の「小さいは正義」というメッセージはこの不満に正面から応えたものだ。3日で1億円突破がニーズの大きさを物語っている。だがSwitchBotがMakuakeを使うのはこれが初めてではない。SwitchBotカーテンなどで実績を重ね、K10+は3回目のMakuakeキャンペーンだった(SwitchBot公式ブログ)〔確認済〕。INTERNET Watch(2023年4月25日)の取材に対し同社は「このサイズでマッピング対応のものがなく参考にする製品がない」ためフィードバックを直接得たかったと説明しているが、3度目の利用となれば「探索」より「確立されたチャネル戦略」と見るのが自然だろう。

気になるポイント

Amazonプライムデー価格逆転事件。K10+最大の問題は製品ではなく売り方にある。2023年7月11〜12日のAmazonプライムデーで、K10+が¥47,800で販売された(orefolder.jp、2023年7月9日)〔確認済〕。Makuake特別価格¥51,800より¥4,000安い。しかもこの時点でMakuakeサポーターの一部にはまだ商品が届いていなかった(ねとらぼ、2023年7月17日)〔確認済〕。あるユーザーはこう記している——「出資者価格より安く販売&出資者よりも早く商品を届けた」(まとめダネ!、2023年7月16日)〔確認済〕。SwitchBotは7月12日までにMakuake以外での販売を全面停止し、7月14日に正式謝罪を公表した(ねとらぼ、同)。保証期間を3年に設定し〔確認済〕(延長前の標準保証年数は公式サイトで確認できなかった〔未確認〕)、アクセサリー無料提供などの補償策を打ち出したが、「プライムデーのほうが安くてショック」(ねとらぼ、同)という支援者の失望は拭い切れなかった。

SwitchBot K10+ゴミ収集ステーションの実機を正面から撮影した支援者の写真
出典:minnano-rakuraku

一般販売予定価格のかさ上げ。キャンペーンページの「一般販売予定価格¥68,880」に対し、実際のAmazon定価は¥59,800。差額はMakuake限定アクセサリーセット込みという解釈も可能だが、ページ上では割引率の母数として使われており、消費者の割安感を増幅する構造になっていた〔確認済〕。

「世界最小級」の射程。キャンペーンの中心主張「世界最小級」は、正確には「ゴミ収集ステーション付きロボット掃除機として」の限定つきだ。この範囲では2023年時点で同等サイズの競合は確認できず、主張自体は妥当と判断できる。ただし「世界最小級」の定義——何と比較して、いつ時点で——は公式に明示されていない〔確認済:メーカー公称〕。マーケティング上のインパクトは大きいが、条件の開示がないまま消費者に判断を委ねている点は指摘しておきたい。

「SilenTech」と「図書館より静か」の実態。独自技術「SilenTech」による45dB以下の静音性を謳い、「図書館よりも静か」と表現している。SwitchBot公式の説明によれば、SilenTechはエアフロー制御と吸音素材を組み合わせたダクト設計だ。技術的な裏付けはあるが、JIS規格で図書館内の目安は40dBであり、スペック上の「45dB以下」だけでは図書館より静かとは言えない。しかし独立レビュアー(たいしょんブログ)の実測では標準モードで37〜39dBと報告されており、実運転音はスペック値を大幅に下回っている〔確認済〕。つまり「45dB以下」は上限表記であり、通常使用時に図書館の基準値を下回る可能性は高い。スペック表記と実測値の乖離は消費者にとって分かりにくいが、「図書館より静か」は実測ベースで裏付けがある。なおゴミ収集ステーションへの吸い上げ時は別問題で、「夜にやっちゃダメなやつ」(hirama1406.com、2023年5月22日)と指摘されている〔確認済〕。

アプリの不安定さ。価格.comのユーザーレビュー(2023年7〜8月投稿)では、禁止エリア設定が別モードにも適用される、全エリア掃除でも一部を飛ばして完了になる、といった報告がある。ただし同じレビュアーが「フィードバックには対応してくれるし、数ヶ月後にアップデートされたりもする」とも述べており〔確認済〕、改善姿勢がある点は公平に記しておきたい。

応援したいポイント

小型化の技術力。直径24.8cmにLiDAR SLAMを収めた設計は本物だ。価格.comのMakuake先行購入者レビュー(2023年6月投稿)に「ファーストインプレッションは最高」「日本人の繊細さに合ったロボット掃除機というコピーが正にその通り」とあるのは、リップサービスではなく実感だろう〔確認済〕。

SwitchBot K10+の機能一覧。障害物回避、静音性、吸引力、利便性、衛生面、空間認識の6つの特徴
出典:cdn

危機対応の速度。プライムデー問題の発覚から3日で謝罪・販売停止・補償策を発表した。対応の是非はともかく、「黙って逃げる」クリエイターが珍しくないMakuakeにおいて、このスピード感は異例だ。

シリーズ化という市場の答え。K10+を原点にK10+ Pro、K10+ Pro Combo、K11+と後継機が矢継ぎ早に展開されている。このサイズ感に対する市場の支持が一過性ではなかったことの証明だ。

比較・代替案

K10+に興味を持った人が今選べる選択肢を整理する。

K10+の直系後継機であるSwitchBot K11+は、同じ24.8cmボディで吸引力が6000Paに向上し、セール時には¥39,800まで下がる。K10+の「あの小ささ」が気に入ったなら最初に見るべき一台だ。

コスパ重視ならAnker Eufy RoboVac G40 Hybrid+が¥39,800〜¥49,800。K10+ほど小さくはないが、ゴミ収集ステーション付きで吸引・水拭き対応、ブランドの信頼性も高い。

LiDAR SLAM搭載の本格派にはECOVACS DEEBOT N10 PLUS(¥49,800〜¥59,800)がある。性能ではK10+を上回るがボディは標準サイズのため「小ささ」重視の人には向かない。

日本市場でのサポート体制を重視するならiRobot ルンバ コンボ j5+(¥69,800〜¥89,800)。価格帯は上がるが長期保有前提の安心感がある。

掃除を丸ごと任せたい人にはSwitchBot K10+ Pro Combo(セール時¥69,999)——ロボット掃除機・スティック掃除機・集塵ドックの3in1という選択肢もある。

なお、本稿執筆時点でRakutenアフィリエイトカードの取得が完了していないため、カード取得後に更新予定。

まとめ

SwitchBot K10+は、日本の住宅に最適化された小型ロボット掃除機として確かな需要を掘り当てた製品だ。技術力は本物であり、ユーザー評価も概ね良好。製品の実力に疑いはない。

だがMakuakeの「応援購入」として見たとき、話は変わる。前述の価格逆転問題と一般販売予定価格の構造を踏まえれば、すでに販売力を持つブランドが3回目のMakuake利用で「応援購入」を掲げた意味は問われて然るべきだ。この問いはSwitchBotに限らず、Makuake全体の構造的課題として残り続ける。

いま中古で検討している人へ——K10+の中古相場は¥20,000前後。製品の信頼性は高いので、バッテリーの劣化具合とゴミ収集ステーションの有無を確認すれば実用的な買い物になる。ただし後継機K11+のセール価格が¥39,800まで下がることを考えると、中古に¥25,000以上出すなら新品K11+を待つほうが賢い。

これからロボット掃除機を買いたい人へ——K10+の「小ささ」に惹かれたならSwitchBot K11+を第一候補にしてほしい。同じボディサイズで吸引力2.4倍、価格も同等だ。コスパ重視ならAnker Eufy RoboVac G40 Hybrid+が¥4万前後で手に入る。掃除を丸ごと任せたい人にはSwitchBot K10+ Pro Comboがある。

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Alex Ishiguro

編集長

MakuakeやCAMPFIREで話題になった商品の「その後」を追うメディアを運営。約束されたものが実際に届いたのか、消えてしまったのかを記録する。

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